フォートワース・ストックヤード国立歴史地区(Fort Worth Stockyards National Historic District)に位置するストックヤード・ホテル(Stockyards Hotel)は、フォートワース(Fort Worth)の歴史と文化を象徴するランドマーク的存在です。1907年に開業したこのホテルは、かつて牛の取引と食肉産業でにぎわっていた時代の雰囲気を色濃く残す建造物であり、現在ではアメリカ合衆国の国定歴史建造物にも登録されています。
ホテルは1907年12月、当時の実業家トーニッシュ氏によって3階建ての赤レンガ造の建物として開業されました。1913年には専用バスルーム付きのスイートルームや、地下ボイラーを使った暖房システムが導入されるなど、当時としては近代的な設備が整えられました。その後長年にわたって営業を続けた後、1982年から大規模なレストアが行われ、創建当時の雰囲気をできる限り残したうえで現代的な快適性を加えたホテルとして1984年4月に再オープンし、現在に至るまで営業を続けています。

ストックヤード・ホテルの建築様式はアメリカン・ルネッサンスを基調とし、堂々とした赤レンガ造りのファサードにはクラシカルな装飾や石の彫刻が美しく施されています。ホテルの前に広がる石畳の通りと調和し、この歴史的なエリアを訪れる人々をノスタルジックな雰囲気で出迎えています。一歩館内に足を踏み入れると、ウッドパネルの壁やレザーの装飾、アンティーク調の家具が随所に配置されており、まるで西部劇の世界に入り込んだような感覚に包まれます。館内の落ち着いた照明や木の温もりが感じられる空間は、宿泊客にとって特別な滞在体験を提供してくれます。
客室は全部で52室あり、そのうち10室がスイートルームとして提供されています。それぞれの部屋には西部開拓時代や19世紀のアメリカをテーマにした装飾が施されており、どの部屋もユニークで趣があります。中でも特に有名なのが「ボニー&クライド・ジュニア・スイート」です。1933年に悪名高きアウトロー、ボニー・パーカーとクライド・バロウが実際に宿泊したとされており、その部屋は今でも当時の間取りをほぼそのままに提供されています。室内には、ボニーがクライドに捧げた詩が飾られており、アメリカの犯罪史に名を残した二人の存在を間近に感じることができます。


ホテルにはレストラン「Hunter Brothers’ H3 Ranch」も併設されており、本格的なテキサス料理を楽しむことができます。ヒッコリーウッドで焼き上げるステーキやリブ、バーベキューなどは地元でも評判が高いレストランです。食事の質の高さと、ウエスタン風のインテリアが調和した空間でのひとときは、このホテルの大きな魅力のひとつといえるでしょう。
ストックヤード・ホテルは、ダラス・フォートワース国際空港(Dallas Fort Worth International Airport )からは約40分、フォートワース市内中心部からは10分ほどでアクセスできる便利な立地にあります。ホテルには宿泊者向けに24時間対応のバレーパーキングサービスが用意されており、料金は1泊あたり28ドルです。近隣には公共の有料駐車場も複数あり、イベント開催時にも比較的スムーズに駐車場所を見つけることができます。
ストックヤード・ホテルは、ストックヤード歴史地区の入り口に位置し、ストックヤード・ステーションやカウタウン・コロシアムなど、周辺には観光スポットが充実しています。さらに毎日2回、カウボーイたちが本物のロングホーン牛を引き連れて行進するキャトル・ドライブもホテルを出て徒歩で数分の場所から見学することができます。単なる宿泊施設という枠を超えた、フォートワースの歴史とウエスタン文化を体験できる特別なホテル。テキサスのロードトリップにおいて、ひときわ印象に残る滞在先を探している方には、まさにうってつけのホテルのひとつといえるでしょう。
Stockyards Hotel
Address: 109 E Exchange Ave, Fort Worth, TX
Web Site: Stockyards Hotel
photo: ©Travel Texas ©Visit Fort worth © KURUMAG