ヒューストン(Houston)のダウンタウンから東へ車でおよそ20分。テキサス州の歴史を語るうえで欠かせない史跡、サン・ハシント戦場州立史跡(San Jacinto Battleground State Historic Site)があります。ここは、テキサスがメキシコからの独立を決定づけた歴史的な戦い「サン・ハシントの戦い(Battle of San Jacinto)」の舞台です。緑豊かな約1200エーカーの敷地内では、歴史を学ぶだけでなく、自然と触れ合える場として、地元の人々や観光客に親しまれています。
1835年、当時メキシコの支配下にあったテキサス植民地の住民たちは、独立を求めて蜂起しました。そして、翌1836年3月には「アラモの戦い」が起こります。悲劇的な結末を経て迎えた同年4月、アントニオ・ロペス・デ・サンタ・アナ将軍率いる約1300人のメキシコ軍と、サム・ヒューストン将軍率いる約900人のテキサス義勇軍がこの地で激突しました。テキサス軍は地形を活かし、午後4時に奇襲を敢行。わずか18分で圧倒的勝利を収め、テキサス共和国の独立を決定づける瞬間となったのです。
史跡の中心にそびえるのが、サン・ハシント記念塔(San Jacinto Monument)です。テキサス共和国建国100周年を記念して建てられたこの塔は、高さ約173mを誇り、ワシントンD.C.のワシントン記念塔を超える高さを持つ、アメリカ屈指の記念塔です。塔の先端には、重さ約220トンの「テキサス・スター」が輝き、独立の誇りを象徴しています。基部には、テキサスの歴史を物語る8枚のレリーフパネルが飾られ、前庭には6本のテキサス革命期の軍旗が掲げられています。塔内の展望台からは、ヒューストンの町並みやガルベストン湾を見渡すことができ、その眺望は圧巻です。建築様式はアール・モダンの代表作とされ、国定歴史建造物にも指定されています。
記念塔の1階には、サン・ハシント歴史博物館(San Jacinto Museum of History)が併設されています。館内では、サン・ハシントの戦いはもちろん、先住民の文化やスペイン植民地時代、独立戦争から共和国時代までのテキサスの歴史を幅広く紹介しています。英語中心の展示ではありますが、映像や模型などのビジュアル資料が豊富で、子どもから大人まで楽しめる内容となっています。



また、記念塔の周囲には広大な芝生広場や遊歩道が整備され、石碑や記念碑が点在しています。全長300メートルほどの湿地帯のボードウォークでは、沿岸鳥類のベニヘラサギ、ミサゴ、シロペリカンなどの姿や、時にはカワウソが観察されることもあります。自然観察を楽しみながら、当時の戦場の面影に触れることができる貴重なエリアです。
サン・ハシント戦場州立史跡では、年間を通してさまざまなイベントが開催されています。なかでも注目なのが、毎年4月21日「San Jacinto Day」の前後に行われる戦闘再現イベントです。当時の衣装をまとった参加者が登場し、実際に大砲やマスケット銃を使って戦いの様子を再現。「Remember the Alamo!」の掛け声とともに、短時間で決着がついた歴史的戦いの緊張感が生き生きと蘇ります。訪れた人々は、音、煙、装束、動きによって1836年の戦場にタイムスリップしたかのような体験を味わえます。



営業時間は、感謝祭やクリスマスなどを除き、毎日9時から18時まで。広場や遊歩道など屋外エリアへの入場は無料です。記念塔と博物館は、水曜日から日曜日の9時〜18時に開館しており、入場料は大人(12歳以上)$14、シニア(65歳以上)$10、子ども(4〜11歳)$6、3歳以下は無料です。敷地内の道路沿いに駐車スペースがあり、通常は無料で利用することができます。訪問前に、イベント開催日や展示などの最新情報について、公式サイトで確認しておきましょう。
ヒューストンのダウンタウンからほど近い距離にありながら、静けさと歴史の重みを感じられるこの場所は、まさにテキサスの「原点」を実感できる貴重なスポットです。歴史ファンはもちろん、自然や文化に関心のある旅行者にとっても忘れがたい体験となるでしょう。
San Jacinto Battleground State Historic Site
Address: 3523 Independence Pkwy, La Porte, TX
Web Site: San Jacinto Battleground State Historic Site
photo: © Travel Texas ©San Jacinto Museum and Battlefield Association