テキサス州南西部、広大なチワワ砂漠の中に広がるビッグ・ベンド国立公園（Big Bend National Park）は、リオグランデ川の大きな屈曲（Big Bend）に沿って設けられた自然保護区で、総面積はおよそ3,242㎢。東京都の1.5倍以上におよぶ広さを誇り、山岳、砂漠、川、渓谷といった多様な景観がひとつのエリアに集約されています。星空の美しさでも知られ、アメリカでも有数の「ダークスカイ・パーク」に認定されています。
この地が保護されるようになったのは1933年。当初はテキサス・キャニオンズ州立公園として始まり、その後拡張と整備を経て、1944年に国立公園として正式にオープン。現在では国際生物圏保護区にも指定され、アメリカとメキシコが共有する自然遺産の象徴ともなっています。
ビッグ・ベンドを車で巡る魅力のひとつが、複数の景勝地をつなぐ絶景ドライブルートです。なかでも人気のロス・マクスウェル・シーニック・ドライブ（Ross Maxwell Scenic Drive）は、標高差や地質の変化を体感しながら、ビッグ・ベンド屈指の絶景「サンタ・エレナ峡谷（Santa Elena Canyon）」へと向かう約48kmのルート。沿道には「ソトル・ビスタ」「ミュール・イヤーズ展望台」などの眺望スポットのほか、かつての牧場跡や歴史的建造物、キャンプ場も点在しています。
もうひとつの注目エリアは、山岳地帯に広がる「チソス・ベイスン（Chisos Basin）」。標高約1,600mに位置し、園内で唯一ロッジやレストランがある中心的拠点です。ここへ向かう「チソス・ベイスン・ロード」は、短いながらも砂漠から山岳地帯への劇的な景観の変化を楽しめる人気ルート。春には野花が咲き、夜には星空が頭上を覆う静寂の世界が広がります。
そのほか、パンサージャンクションから東へ延びる「リオグランデ・ビレッジ（Rio Grande Village）」方面や、リオグランデ川に沿った「リバー・ロード（River Road）」なども、雄大な風景が連なるおすすめのドライブルートです。園内はすべて制限速度が45マイル（約72km）以下に設定されており、未舗装道やバックカントリートレイルには高い運転技術と準備が必要です。
この公園の最大の魅力は、アクセスの困難さすら価値に変える“秘境感”にあります。サンアントニオ(San Antonio)からは車で6時間。最も近い町マラソン（Marathon）から公園の入り口までは1時間弱かかります。ガソリン、水、食料の補給ポイントは非常に限られているため、長距離ドライブの計画と準備は必須です。夏は40度を超えることもあり、車中の冷房や水分確保は命に関わる重要事項となります。
ビッグ・ベンド国立公園からさらにクルマを進め、西テキサスの文化やアートが息づく町マーファ（Marfa）やアルパイン（Alpine）などへ向かうのもおすすめです。コンセプチュアル・アートとカウボーイ文化が融合した独自の雰囲気は、旅に彩りを添えてくれることでしょう。
広大な自然と地球の力強さを体感できるビッグ・ベンド国立公園。都市部から離れた場所にあるからこそ得られる感動が、そこにはあります。地平線まで続く道を走りながら、アメリカが誇るこの絶景地をぜひロードトリップで目指してみてください。
Big Bend National Park
Address: Big Bend National Park, TX
Web Site: Big Bend National Park
photo:© Brand USA ©Travel Texas
