ヒューストン(Houston)南東部、ウィリアム・P・ホビー空港(William P. Hobby Airport)の敷地内に建つ1940エア・ターミナル博物館(1940 Air Terminal Museum)は、アメリカ民間航空の黄金期を今に伝える貴重な博物館です。1930〜40年代に建設されたアール・デコ様式の旧旅客ターミナルビルを活用し、当時の航空文化や空港建築の美しさを体感できる場所として人気を集めています。
この建物が完成したのは、航空旅行がまだ特別な体験だった1940年。当時のヒューストン・ミュニシパル・エアポート(Houston Municipal Airport、後のホビー空港)のメインターミナルとして使用されました。 そして、白いテラコッタの外壁と直線的な装飾が印象的なアール・デコ建築は、まさに近代化の象徴ともいえるデザインです。建物は管制塔など空港の管理機能も兼ね備えており、「1940年代の空港としては全米でも有数の保存状態を誇る」と評されています。 開業日は1940年9月28日、旅客機用ターミナルとしては1955年春まで使われました。
また、博物館の建物のすぐそばには、1928年にヒューストンに初めて空港がオープンした直後に建設された「WR-4格納庫(Municipal Hangar WR-4)」があります。この建物は、ヒューストンに現存する最古の航空関連建造物と考えられており、航空郵便機の整備施設、イースタン航空ハウストン整備基地、そして固定基地運営施設(FBO)「Sky Travel」として使われてきました。現在は、博物館の航空機コレクションが保管場所として活用されています。
館内には、ヒューストンの航空史を軸に、当時の航空会社の制服、チケットカウンター、古い座席、航空ポスターといった“航空旅行が憧れの時代”の資料が豊富に展示されています。例えば、模型機やエンジン部品、地元出身パイロットの記録・写真などもあり、ヒューストンが航空産業の発展に果たした役割を知ることができます。また、1990年代半ばに解体された国際線ウィングの跡地には、Hawker 125ビジネスジェットが常設展示されています。2019年にはヒューストンを拠点に活動する壁画家 GONZO247 がこの機体を鮮やかな色彩でペイントし、空港の歴史を伝えるパブリックアートとして新たな命が吹き込まれました。
そして、博物館の周囲にはホビー空港の滑走路が広がり、目の前で旅客機の離着陸を眺められるのも魅力のひとつです。



注目したいのが、四半期に1度開催されるイベント「ウィングス&ホイールズ(Wings & Wheels)」。クラシックカーやヴィンテージ機の展示、ゲストスピーカー、飛行機・自動車の参加を含むオープンハウス形式のイベントで、飛行機ファンだけでなく自動車愛好家や家族連れにも人気です。また、毎月第3土曜日(ウィングス&ホイールズ開催月を除く)に開催される「オープンランプデー(Open Ramp Day)」も飛行機ファンに人気のイベントです。普段は一般公開されていないホビー空港西側と博物館3階バルコニーのランプから、空港の様子を間近で見学できる特別な日です。



博物館へのアクセスは、クルマでヒューストン中心部からは州道45号線を南へ約20分。ホビー空港の南西側、Avenue J沿いのゲートから入場できます。敷地内には無料駐車場がありますが、イベント開催時は混雑が予想されます。
営業時間は通常、火曜から日曜の10:00〜17:00(月曜は休館)。入館料は大人$10、子ども(12歳以下)$5、2歳以下の子供は無料です。但し、イベント開催時は大人$12、子ども(12歳以下)$6となっています。
1940エア・ターミナル博物館は、単なる航空資料館ではなく、アメリカの移動文化の変遷を体感できる貴重な場所です。空を旅することがまだ特別だった時代に思いを馳せながら、アール・デコ建築の美しさと航空の歴史に触れてみてはいかがでしょう。
1940 Air Terminal Museum
Address: 8325 Travelair St, Houston, TX
Web Site: 1940 Air Terminal Museum
photo:©Houston First Corporation

